抗インフルエンザ薬の予防投与

Q:インフルエンザは予防できますか?

A:インフルエンザは飛沫感染と考えられ、最大の予防は基本的な感染対策(マスク、手洗い、うがい、換気)です。ワクチン接種(可能であれば2回)をすることで6割程度の感染予防効果がワンシーズン期待できます。それでも家族が感染するなどしてしまった場合は感染リスクが高くなってしまいます。

抗インフルエンザ薬の予防投与は、インフルエンザに「絶対かかりたくない」時の切り札になります。インフルエンザ患者との接触から36時間以内に受けられれば発症を防ぐ効果が期待できます。
一緒に住んでいる同居人がインフルエンザに感染してしまい、患者を看病する必要がある場合は抗インフルエンザ薬の予防投与が検討されます。
インフルエンザの予防治療に使われる抗インフルエンザ薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)は3種類、経口薬のタミフル(一般名:オセルタミビル)、吸入薬のリレンザ(一般名:ザナミビル)、吸入薬のイナビル(一般名:ラニナミビル)が認められています。

抗インフルエンザ薬には、体の中でインフルエンザウイルスが増えるのを抑える作用があり、インフルエンザウイルスに感染しても体の中でウイルスが増えにくくなり発症を予防できます。
タミフル、リレンザ、イナビルを予防に用いる場合は、いずれも原則として、治療に使う量の半分を、倍の期間使用します。使用期間は薬によって異なり、タミフルは7~10日間、リレンザは10日間、イナビルは1~2日間です。
予防使用の場合、ワクチンと同様、公的医療保険は使えず自費診療の扱いとなります。ワクチン摂取では1シーズンの免疫力を高く保ちつづけることができますが、抗インフルエンザ薬の予防投与の場合、投与期間しか予防効果はありません。(イナビルは服用開始から10日間)。

診察料金と薬料金を合わせて、費用が必要となります。

診察料金(クリニック):約4,000~5000円(初診料、処方料等)
薬料金(調剤薬局にて):約4,500~6,000円​

 

Q:受験生という理由で抗インフルエンザ薬の予防投与を受けられる?

A:インフルエンザの予防投与を受ける原則は(1)同居人がインフルエンザに感染したことに加え、(2)感染した場合に重症化しすい人(65歳以上の高齢者・気管支喘息など慢性の呼吸器疾患がある・心不全など慢性の心臓病がある・糖尿病などの代謝性疾患がある・腎臓病がある)であることです。
では、入試の直前に家族がインフルエンザにかかってしまった場合など、条件に当てはまらない場合はどうすればよいのでしょうか?
この場合、薬剤の添付文書に記載されていない使い方(適応外処方)となるため、万一、重い副作用が起こっても「医薬品副作用被害救済制度」の対象とはならず、補償が受けられないというデメリットがあります。また、抗インフルエンザ薬を使い過ぎると、薬への耐性を持ったウイルスが出現する恐れがあります。このため、個別の事情をどう受け止め、適応外処方の可否を判断するかについては、医師によって考えが異なります。
当院では一生に何度もない入学試験の場合はご本人ご家族のご理解と同意がある場合は処方対応になると考えます。安全性を考え、リレンザの吸入薬を推奨させていただきます。

 

 

2022年12月11日